あいつの残したものは
康博 鈴木
思い出の中へ消えかけていた君から
遠い日々を呼びもどすような電話が
大人びた声に 驚きを隠せずに
おもわず
あいさつの言葉さえでなかった
いまなら あなたに逢えそうな
気がするという
哀しみもいえて あなたに
笑顔が見せられる
あいつの想い出を語る 君の横顔に
少女らしい
あどけなさなんてみえない
あいつは妹だった君に 突然
ひとり生きる寂しさだけのこし
死んだ
たよる人をなくして
一人怯えながら
ながしてきた涙が
君をつよくした
なぜ いまごろ愛を
打ちあけにきた
若き日々の中へ
君をおいてきたのに
なぜ いまごろ愛を
打ちあけにきた
若き日々の中へ
君をおいてきたのに
あいつが私に残したものは
あどけない頃の君の
ほほえみだった