潮風のアリア
Shigeru Kishida
行く宛知れず
嫋やかに飛び交う鳥たちも また
街並みを 後ろに背負い
闘う彼等は 足並み揃えて静かの海へ
どこ迄も 終わらぬ旅へ
人知れず花詰む あなたは もうすぐ
次の季節を待ちのぞむ人々の 声を歌にして紡ぎ出す
彼方まで響きわたるようなピアノ線の音
有明の月 永遠の調べ
鴎さえ 啼くのを躊躇う
哀しい気持ちと
それに忍び寄る戸惑いの影を
振り払うこともなく あなたは
数多の影を追い越して 行くだろう 星は流れて
海鳴りは あなたを待っている
たまたま 途中の駅に降り立ち
潮風を浴びて あくびでも出ようものなら まぁいいさ
面影探しの旅は 前の列車の残り香と
たばこを消した
思い出と生き方はいつも釣り合わないものだ
何度でも間違えればいいさ
星がいま 流れたよ
魚群は光る なだらかに動いて
心の隅を撫でるように 言葉を残す
あれから 何年経っても何故か 思い出せないのは
その言葉よりあなたの笑顔