冬の雁
新司 谷村
手紙はみんな 破りすてた
燃やす勇気は あったけれど
雨の気配ね 窓の外は
濡れてる人も いるんでしょうね
あなたがくれた 言葉を生きがいに
暮らしつづけてきた
それも今日まで
悲しいけれど やさしさだけでは
生きてゆけない
そんな年なの おかしいでしょう
食事の仕度を しなければ
母がいないと 大変なのよ
雨の気配は 道をおおい
きっとあなたも 濡らすでしょうね
人それぞれの 幸せがあるらしいわ
私はこれで きっと良かったのよ
好きやきらいで 別れたりできる
遊びまがいの 恋は出来ない
おかしいでしょう
おかしいと言えば この家で
生まれでずっと 暮らしてきたわ
心配ばかり かけつづけの
出来の良くない 娘だったわ
昨日の夜も 父の背中を見ていると
私はゆけない 私はゆけない
飛べない鳥は 空を見つめて
涙流すけれど 飛ばない鳥なの
おかしいでしょう