風船
浩志 稲葉
風船が 浮かんでいる
二人の間に浮かんでいる
ちくちくいじめてみたり
ときどきいとおしく見つめてみたり
どうかわれないように
どうかいつまでも
晴れの日も 雨の日もふわりふわり
ときには 屋根の上
ときには すぐとなりで
何もないように
ただ身をまかせている
いつかくる大きな風を待って
ぼくらを乗せて青い空をゆけ
風船が ふくらむのは
二人のきもち やさしいきもち
さみしげにしぼんでいるのは
かなしい言葉を ふきこんだから
どうかわれないように
どうかいつまでも
晴れの日も 雨の日もふわりふわり
ほんの少しだけのわかりあえること
そんなもろいもの
たちがつまっている
二人ではじめたことを みんな
ゆっくり育てよう花が咲くまで
はなれることは終わることじゃない