風の姿
Keina Suda
風が忙しなく窓を叩いた
その度に秋の匂いがした
閉じた瞼に触れる 生温い熱
真夜中の羊の群れに
手を伸ばす気怠い部屋で
潤む瞳は誰を思い出していたの
長い髪が細い指が
昇る陽に溶けていた
その姿に愚かなほど
見惚れていた
水面に映る姿を覗く
猛毒の様な私がいた
呼応して今を交わして生き延びている
向い風に抱きしめられて
得も言えず声を失う
この心は言葉で言い表せない
晴々と語る声が
鳥の様に響いていた
その音色に近付くほど
顔を伏せた
思い出せないことが
ひとつひとつ増えていく
大事な温もりも 帰るべき場所も
言い出せないことが
ひとつひとつ増えていく
後悔も焦燥もあなたが赦した
微笑みが 触れる指が
憎いほど優しくて
一筋のその眼差しが
胸を刺した