蕾に雷

Hakushi Hasegawa

木だけのものじゃないから避雷針は
肺をくらやみに馴染ませ
思い出すの 舞台
プレートリバーブの空が胸骨を
満たす僕は減る 減ろう
髪から なまえが憑いたときから
爪ゆく 雷のほうに見惚れて

僕は恋をしている筈で

血の中には何もなくていい筈で
電より早いものがある筈で
僕が恣に呪って確かめる筈で

(靁蕾靁蕾靁蕾靁蕾)

誰かいるのは分かってた筈なら
向うを照らしてほしいね
こどものころに観たホラー映画の
電気が未だ (靁蕾靁蕾靁蕾靁蕾)

(木だけのものじゃないから わたしたちは)
(龍の稜線からはみ出し 踊り出した額)
(病みばなの歯たちが齧る草木を)
(ひらく 僕が)

靁蕾靁蕾靁蕾靁蕾
蕾靁蕾靁蕾靁蕾靁
靁蕾靁蕾靁蕾靁蕾
蕾靁蕾靁蕾靁蕾靁
靁蕾靁蕾靁蕾靁蕾
蕾靁蕾靁蕾靁蕾靁
靁蕾靁蕾靁蕾靁蕾
蕾靁蕾靁蕾靁蕾靁

光と細い肌のびりがずれてきて
雷を枯らすときまで
僕は恋をしている筈で

髪は少しも動かせない筈で
爪達は少しも騒ぎ出さない筈で
僕は薄い暗闇しか分からない筈で

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