ココニナク
近野淳一
手を伸ばしたその時には
あの人はもうここになく
あの人がどこへ
行っちまったか教えてください
灯りが消えたこの部屋で
手探りで探す幸せは
時には甘く 時には重く
互いの道を描いた
空が星と重なれば
夢物語を口ずさみ
空を雲が目隠しすれば
光の意味を語り合った
街は今日も賑わいて
人の気も知らずはしゃぐ人の群れ
それはまるで
あの人を
置き去りにして逃げていった
情けない俺 そのものだ
「知らなかった」なんて言ったって
あの人はもうここになく
あの人がどこへ
行っちまったか知るものなどない
鼓動が刻む存在の音
孤独が刻む後悔の音
一人になる前にまだ
聞きたいことがあった
どうしてこうなった?
なにがどうなった?
写真の奥 笑っている
あの人はもうここになく
あの人がどこへ
行っちまったか教えてください