海辺カラス
絵音 川谷
海の音は残酷だ。
全部流される気がするから。
「私は何も聞いてない」
そう言ったあなたは
踵の高い靴を履いてたね。
ちゃんと覚えてるよ。
白いワンピースも着てた気がする。
僕は何も言えなかった。
いや、言ったかもしれないけど
言葉はまんまと
海に流されてしまったんだ。
思い出してよ。
あの時カラスが鳴いたんだ。
それと同時に消えたんだよ、心が。
海辺カラスは
何を奪いたかったんだろう。
何に鳴いたんだろう。
何を伝えたかったんだろう。
僕は涙が止まらなくなった。
全部わかったから。
明日あなたに
手紙を書くことにしました。
宛先はないけど。
気に入ってくれるかな。
あっカラスの鳴き声だ。