南十字
丈洋 河野
長い旅の記憶
真夜中を指していた時計を
もとに戻してゆく
夢の群れに沿ってあたたかな海へ
漕ぎ出そうとしてる
誰も答えない未来をずっとひとりで
風のように漕いでった無我夢中で
何度も近づけることを
それだけを思って空を見た
未来へのことを広げたら
数えきれない
浅い闇で目をこらして
描いていた図形が
胸を焦がしてゆく波の音は去って
もうどこにも
きみがいないような気がする
輝きだけが行く手をすっと開いて
夢のように舞っていた
南十字を目指した
いま見てることを頼りにしておいて
ボートを漕いだ
未来へのこと広げたら数えきれない
冷たくなったぼくの手と
同じくらいの冷たさで
いま気配を消して頭上を行く
幽霊の雲
生まれ変わった雨粒よすべてを抱け
忘れない声を胸にひとつ持って
どこにでもきみを描くように進む
何度も近づけることを
それだけを思って空を見た
未来へのことを広げたら
数えきれない
いま見てるこの世界を飛び出して
会いに行くんだ
未来へのこと広げたら数えきれない